日本では外国人も社会保障の対象であり、そのため年金を含む社会保険には加入しなければなりません。しかし年金は原則、退職後に受け取るものであるため、数年だけ日本で働いたのちに母国に帰る外国人は加入に抵抗を感じるかもしれません。実際にこのような事態は想定されており、外国人に向けては年金受給資格がなく帰国する場合には脱退一時金が受け取れるという制度があります。そこで今回は年金の脱退一時金という制度について、要件や申請方法、注意点などをご紹介します。
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外国人の年金保険料
国民年金保険というと日本国民にだけ課せられる義務と思われるかもしれません。しかし実は日本で働く外国人も対象になります。その理由と受給要件をご紹介します。
加入の必要性
日本の年金制度というのは老齢年金の支給に限らず、事故にあった場合の障害年金などにも適用されます。こうした社会保障は外国人にも適用されるため、社会保険に加入する事業所において一定の就労条件を満たす場合は、外国人であっても国民年金に加入しなければなりません。
受給要件
とはいえ社会保障の対象となるのは多くの場合に老齢給付というのが現実です。給付の要件としては保険料納付済み期間と免除期間の合計が10年必要です。そのため外国人労働者が10年未満で帰国する場合には原則老齢年金は受給できません。ただし、社会保障協定を締結している国からの労働者の場合には日本での加入期間が10年未満でも受給できる場合があります。
脱退一時金の支給
それでは外国人の場合は掛け捨ての年金を払わなければならないのかというと、必ずしもそうではありません。脱退一時金という制度があるので、支払った保険料の一部は受け取りが可能です。被保険者資格を喪失し、日本に住所がなくなった日から2年以内であれば請求ができます。
脱退一時金の支給要件
外国人労働者に限り年金の一部が支給される脱退一時金ですが、支給を受けるためにはいくつかの要件があります。確実に受け取れるように事前に確認しておきましょう。
国民年金の支給要件
国民年金に加入している場合の要件は以下の通りです。被保険者の期間と請求期限に特に注意をしましょう。
- 被保険者期間が6ヶ月以上あること
- 日本国籍でないこと
- 老齢年金受給資格が発生していないこと
- 国民年金の被保険者でないこと
さらに以下の条件に当てはまらないことも重要です。
- 日本国内に住所がある
- 障害基礎年金などを受給したことがある
- 請求期限を過ぎている
厚生年金の支給要件
企業に勤めて厚生年金に加入している場合は以下の通りです。ほとんどの条件が国民年金と同じです。
- 厚生年金保険(または共済組合等)の加入期間が6か月以上あること
- 日本国籍でないこと
- 老齢厚生年金の受給資格が発生していないこと
さらに以下の条件に当てはまらないことも重要です。
- 日本国内に住所がある
- 障害厚生年金などを受給したことがある
- 請求期限を過ぎている
脱退一時金の額
さて支給要件が確認できたところで、気になるのは脱退一時金の額ですが、国民年金と厚生年金のそれぞれに算出方法が定められています。ただし注意をしたいのは負担した保険料がすべて受給できるわけではなく、現行の制度では支払い上限は36ヶ月です。
詳しくは下記の参考URLを確認してください。
参考:日本年金機構|短期在留外国人の脱退一時金
請求手続き
最後に請求手続きについて紹介します。日本での就労を終えて帰国が決まった際には以下の書類を揃えて、脱退一時金を請求しましょう。
請求書類
申請には以下の書類が必要です。条件によっては必要な書類が異なる場合もあるので詳しくはコチラもご参照ください。
- 請求書
- パスポートの写し
- 住民票の除票(平成24年7月以降の被保険者で、転出届を出している場合を除く)
- 本人名義の銀行口座情報
- 確認書類
- 年金手帳
請求先
書類が揃ったら申請をします。基本的には日本年金機構が窓口ですが、共済組合の加入期間がある場合で、国民年金の加入期間が6ヶ月を超えない場合は。最後に加入していた年金の実施機関へ請求します。
注意点
脱退一時金はあくまでも老齢年金の受給資格がない場合に支払われます。通算して10年以上の被保険者期間がある場合には、老齢年金として年金の受け取り年齢に達した時点において支払われるので注意が必要です。
また、申請の期間は日本からの転出日もしくは被保険者資格の喪失日のどちらか遅いほうから2年以内です。遅れなく申請するようにしましょう。
まとめ:退職する外国人は年金保険料を一部受け取り可能
- 外国人も年金に加入しなければならない
- 要件を満たせば10年未満の加入期間で退職する場合は一時金が受け取れる
- 要件や請求期間を必ずチェック
日本で労働する外国人が受け取ることのできる年金の脱退一時金についてご紹介しました。日本国内で就労する外国人は社会保障の対象であり、国民年金の被保険者とならなければなりません。しかし、老齢年金の受給資格である10年以上の期間を日本で労働しない場合に年金が掛け捨てにならないよう、外国人である場合に限り脱退一時金という制度が利用できます。
つまり諸要件を満たしており、年金の被保険者である期間が10年未満であれば、申請をすることにより脱退一時金を得ることが可能なのです。外国人就労者が年金の支払いに疑問を感じている場合には、こうした特別制度があることを説明してみることをオススメします。