身元保証人と言うと、人材を採用した時の人物照会などのために届出てもらうもの、というのが一般認識ではないでしょうか。一方で、外国人を雇って日本で働いてもらうためには、法務省が定める身元保証人を申請する必要があるのはあまり知られていません。
今回は外国人の身元保証人を取り上げ、身元保証人が必要な理由や、身元保証人の責任範囲、そして身元保証人になるための条件などを解説します。また、採用時の身元保証人規定を外国人にも適用するための注意点もご紹介します。
Contents
身元保証人が必要な理由とは?
外国人の身元保証人が必要な理由を、身元保証人制度の概要や責任範囲とあわせて解説します。
万が一の連帯責任を担うため
身元保証人は、外国人の日本国内の在留が違法ではないことを証明し、外国人に万が一のことがあった時に道義的責任を担います。身元保証人の保証内容は、次の3点に限定されています。
①外国人が滞在費を支払えない時に、その費用を負担する。
②外国人が帰国するための費用を支払えない時に、その費用を負担する。
③外国人による日本国法令の遵守を保証する。
なお、外国人の身元保証人が負う責任はあくまでも道義的なものであり、民法上の連帯保証人のような法的責任は生じません。
在留資格の更新で求められる
外国人の身元保証人は、在留資格の申請や更新・変更時に申請します。その際使用する身元保証書の様式は、法務省ホームページ上で公開されています。
URL:身元保証書(日本語版)
URL:身元保証書(英語版)
身元保証人になれるのは誰?
身元保証人は、外国人の滞在費や帰国のための旅費を負担したり、法令遵守を保証するうえでの道義的責任を担うため、責任履行力や身元保証人になる意思を持つ人物が適格とされています。
身元保証人の条件は次の2点です。
①日本人あるいは永住者であること。
永住者以外の外国人は在留期限があるため、身元保証人の適格がないと見なされます。
②安定した収入があること。
外国人が滞在費や帰国時の旅費などを支払えない時は、身元保証人が負担するためです。
上記を踏まえ、どのような人物が身元保証人になれるかを解説します。
会社の責任者や担当者
外国人を雇う時は、雇用先の責任者あるいは担当者(社長・上司・所属部署やプロジェクトの担当者など)が身元保証人になるのが一般的です。
ただし、前述の①にもあるように、日本人もしくは永住者しか身元保証人になることができません。外資系企業などで身元保証人の候補者が外国籍である場合は、永住権を持っているか必ず確認してください。
日本人の配偶者
在留資格の申請者である外国人の配偶者が日本人か永住者であれば、配偶者が身元保証人になることも可能です。
ある程度の資産を持つ永住者
先ほどご紹介したように、身元保証人の条件は、①日本人・永住者であり、②安定した収入がある人物です。つまり、②を満たせば永住者も身元保証人になることができます。
保証人提出は会社規定で異なる
社員を採用する時の身元保証は、外国人の在留に関わる身元保証と異なります。採用時の身元保証とは、雇い入れた従業員が会社に損害を与えた時に、身元保証人が連帯でその賠償責任を負うものです。
採用した人物に身元保証書を提出してもらうか否かは、企業の判断に委ねられています。ただし、身元保証人の責務を含む社内規定の内容は、身元保証法を遵守していなければなりません。
外国人を採用する時は、日本人社員と同じ規定を用いるのが一般的です。ただし、外国人社員が会社に損害を与えるようなことがあっても、母国の家族に賠償を求めることは難しいでしょう。
そこで、外国人採用の際の身元保証人は、在留時の身元保証人と同一人物にお願いしてもらうのが望ましいと言えます。自社採用で身元保証人が必要な場合は、社内規定をよく確認したうえで身元保証書の提出を促して下さい。
まとめ:外国人社員に身元保証人の提出を促そう
ここまで、外国人の身元保証人について詳しく解説しました。身元保証人は外国人の日本滞在を保証する人物であり、在留資格の取得時だけでなく、更新や変更の手続きの際にも届出が必要です。
外国人の身元保証人は、連帯保証人のように法的責任を負うことは一切ありません。万が一トラブルが起きても、身元保証人が巻き込まれるような事態は滅多になく、債務保証などのリスクも生じないため、条件を満たす人物であれば身元保証人として申請できます。
また、外国人の身元保証人とは別に採用時の身元保証書を提出してもらう時は、自社規定に沿って対応しましょう。