外国人社員が帰国するパターンは大きく分けて、一時帰国と退職・転職のための本帰国の2つに分かれます。どちらの場合でも、会社が手続き概要をしっかりと理解して進めることで、外国人社員の帰国手続きをスムーズに進めることができますし、会社側の余計な作業を防ぐことができるというメリットがあります。ここでは、外国人社員の退職に伴う手続きに加え、帰国時の出入国管理・税金・社会保障・その他生活上の手続きについて、詳しくご紹介します。
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帰国する従業員。人事はどう対応する?
人事担当者が外国人従業員の帰国に際して取るべき対応には、次のものがあります。
帰国前の準備が必要であることを理解してもらう
帰国前には、入国管理局や居住地域の市区町村への届出、健康保険や年金の脱退等、所定の手続きが必要です。これらは本人が知らない可能性もあるため、帰国時期が決まった時点で説明して、トラブルが発生しないよう手続きに関して理解を深めてもらいましょう。
退職後の連絡先を確認しておく
日本人従業員の時と同様に、社員の退職後の連絡先を確認して、会社と本人の双方が連絡を取り合える体制を整えておきます。個人情報について人事が把握していないメールアドレスから問い合わせが来ても、本人確認が困難になる場合があります。何かあれば固定のアドレスから連絡をとることをルール化しておくと、確認の手間がかかりません。
帰国手続きを説明した資料を渡す
説明の際に資料も用意して渡しておけば、本人の理解を助け、トラブルの予防にもなります。入社時の配ったり、常に閲覧できるよう書面や共有ファイルにデータとして保存しておくことをおすすめします。読み合わせを行うと親切です。
また、これらについては退職による帰国なのか、一時帰国なのかどちらに該当するかによって、必要な手続きや注意すべきポイントが異なります。詳しくは後ほどご説明します。
一時帰国の帰国手続き
外国人社員が一時帰国する際の手続きには、出入国に関するものと、年末調整・確定申告に関するものとがあります。
一年以内の帰国
日本で働く外国人が一時帰国する場合、出国から再入国までの期間が原則1年以内であれば、事前手続きはとくに必要ありません。空港の出入国審査でパスポートと在留カードを提示するだけで「みなし再入国許可」を取得できます。
ただし、出国から1年以上日本を離れる場合は、みなし再入国許可の対象外となります。予め本人の居住地域を管轄する地方入国管理局で、再入国許可を取得しておく必要があります。なお、再入国までの期間に関係なく、出入国の際は「再入国出国用E/Dカード」に記入して、空港での出入国審査で提出します。
年末前/確定申告時期の帰国
外国人従業員が年末調整前に帰国する場合は、帰国までに必要書類を揃え、提出してもらいます。帰国までの提出が難しい場合は、納税管理人を選任したうえで、納税管理人に確定申告を行ってもらうと良いでしょう。
年末調整前や確定申告時期の帰国に関する詳細は、こちらの記事をご覧下さい。
退職をともなう帰国手続き
外国人社員の帰国が退職を伴う場合は、以下の手続きが必要です。
退職に関する手続き
日本人社員の退職時と概ね同じ手続きを行いますが、外国人社員の場合は「退職証明書」の交付も必要です。
- 源泉徴収票の交付
- 雇用保険離職票の交付
- 健康保険組合の保険証回収
- 退職証明書の交付
- その他、備品や貸与品の回収
※退職証明書について
退職証明書は、外国人労働者の転職時に入国管理局への提出が求められます。労働基準法第22条に則って、本人から請求があった場合に限り、使用期間、業務の種類、地位、賃金、退職の事由(解雇の場合は解雇理由)を記載します。
出国に関する各種届出・手続き
- 住民票の転出届(年金の脱退一時金の請求時に必要)
- 年金からの脱退手続き、および脱退一時金の請求(対象者のみ)
- 年金手帳の返納(手帳が手元になければ再発行が必要)
- 国民健康保険の脱退手続き(加入者のみ)
- 所属機関等に関する届出(中長期在留者で特定の在留資格を有する場合等)
- 在留カードの返納(再入国許可を持たずに出国する場合は出国審査時に返納)
- マイナンバーカードの返納(中長期在留者にはマイナンバーが発行される)
- その他、銀行口座や携帯電話の解約等
まとめ
ここまで、外国人社員の帰国に伴う様々な手続きや注意点をご紹介しました。外国人社員の本帰国が決まると、引っ越しの準備、生活・社会保障面での届出や手続き、社内での引き継ぎなどに追われ、本人は多忙を極めます。彼らの入社時はもちろん、帰国時も同様に人事部のサポートが欠かせないので、外国人社員と人事部双方が理解したうえで手続きをすすめましょう。