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外国人社員が帰国する場合の年末調整。チェックポイントと手続き

日本で働く外国人の年末調整の際に必要な手続きや書類は、日本人社員の時とどう違うのでしょうか。また、外国人社員が帰国目的で退職する場合や、必要書類が期限までに揃えられない場合は、どのように対応すべきなのでしょうか。
今回はこれらの疑問を解消すべく、外国人社員の年末調整において人事部が把握しておきたい課税区分や必要書類、そして気を付けるべきポイントについて、詳しく解説します。

年末調整とは

年末調整とは、1月1日~12月31日までの年間の給与に対する所得税を再計算し、確定させる仕組みです。年末調整で所得税の過払いがあれば、還付金として返ってきます。年末調整の対象者は、給与等所得の金額が2,000万円以下で、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出済みの全従業員です。

外国人社員向けのチェックポイント2

年末調整にあたり、下記2つの事実を明らかにしておきましょう。

1. 居住者か非居住者か

日本で働く外国人社員の場合、社員が所得税法上、居住者と非居住者のどちらに該当するかによって所得税の課税区分が異なります。

  • 居住者…日本国内に住所を有し、なおかつ現在まで1年以上国内に住んでいる者。年末調整は日本人社員と同様に行う
  • 非居住者…来日から1年未満等、上記以外の者。年末調整は不要で給与支給時の源泉徴収のみ行う

2. 親族は非居住者か

海外在住の親族が扶養控除などを受ける場合は、年末調整時に下記の書類および文書の日本語訳の添付が必要です。

・「親族関係書類」…居住者の親族であることを証明する書類(①または②のいずれか)

①戸籍の附票の写しなど日本国又は地方公共団体が発行した書類及び非居住者である親族の旅券の写し
② 外国政府又は外国の地方公共団体が発行した書類(非居住者である親族の氏名、生年月日及び住所又は居所の記載があるものに限ります。)
国税庁「非居住者である親族について扶養控除等の適用を受ける方へ」 より一部抜粋

・「送金関係書類」…親族宛ての金融機関の送金記録や、親族がその送金を生活費などに充てていることを証明できるクレジットカードの利用明細書

これらの必要書類は、外国人社員に十分な説明を行い、年末調整の期限までに提出してもらいます。とくに単身赴任の外国人社員の場合は、非居住者を扶養に入れているケースも多いため、必要書類は必ず事前に確認してください。

年末に調整が難しいケースも

外国人社員の年末調整が難しいケースには、次のようなものがあります。

年末前に非居住者になった

母国に帰国するなどの理由で、年末調整前に外国人社員が非居住者になった場合は、所得税基本通達190-1に基づき、帰国前に確定した給与に基づいて会社が年末調整を行います。
ここでポイントとなるのは、退職日給与支給日帰国日の関係です。A~Cの3通りのケースで考えてみましょう。

A:最後の給与支給日以降に退職および帰国した場合→居住者に該当し、なおかつ給与はすべて国内源泉所得となり、会社が年末調整を行う。(基本通達190-1の適用)

B:帰国後に給与支給日および退職日を迎える場合→給与支給日には既に非居住者であるため、前月までの給与で年末調整を行う。(基本通達190-1の適用外)

C:退職日および帰国日以降に給与が支払われる場合→所得税基本通達 212-3に基づき、帰国日の翌日から国外源泉所得があると見なすことができ、前月までの給与で年末調整を行う。(基本通達190-1の適用外、基本通達212-3の適用)

参照
所得税基本通達190-1

 
所得税基本通達212-3

必要書類が間に合わなかった

年末調整の期限に外国人社員の必要書類が間に合わなかった場合は、本人が税務署で確定申告を行わなければなりません。

また、外国人社員の帰国日までに年末調整の必要書類を揃えるのが難しい場合は、納税管理人を税務署に届出てもらいます。納税管理人は、非居住者、あるいは非居住者となった納税者本人に代わって納税手続きを行います。
なお、納税管理人を選任せず外国人社員が帰国した場合は、確定申告時に期限後申告として扱われ、無申告加算税や延滞税が納税者に課せられます。

まとめ

年末調整の時期は仕事納めに向けて忙しくなる時期です。外国人社員の年末調整は必要書類の準備に時間がかかるものもあるため、事前によく説明して理解を深めてもらいましょう。そのうえで必要書類の取り寄せは早めに対応してもらうよう呼びかけ、手続きをスムーズに進めてください。

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